作品№1

今回の作品は、「空想はいつから始まり、どこから現実であるか」です。

タイトル的には、ゴーギャンの「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」に似ている気もしますが、今回の作品とは特に関係ありません。

シュルレアリスム

アンドレ・ブルトン

では、この絵が何に影響を受けているかというと、シュルレアリスムです。アンドレ・ブルトンや、ジョルジュデキリコなどが、代表的な人物で、翻訳すると、超現実主義なんて言われます。超が付くくらいですから、当然普通の現実ではないわけです。では、どのような現実か、それは例えば、空想の世界や夢の中の世界です。普通、こういった空想の世界などは、非現実的な話として取り扱われますが、本当に現実じゃないのか?むしろ、それも含めて現実なのじゃないか、このように捉えるのが、超現実主義なのです。

夢を見ていることは現実

例えば、夢の中での出来事は、現実じゃない、とします。それは非現実の世界だ。でも、私が夢を見たということ自体は現実ですよね。私は現実の世界の中で、夢を見ているわけです。じゃあ、夢というのも、現実の一部ではないでか?むしろそれは、普段目にしている現実の世界よりも、もっと深い意味を持った現実ではないか?私たちの無意識な感情、あるいは私たちが普段現実の世界で抑圧されている感情が、この夢の世界によって象徴されているのではないか?こういった考え方もできるわけです。

フロイト

ちなみに、こういった思想の元となっているのは、精神家医・フロイト先生です。「夢判断」とかが有名で、その人の見た夢で、その人の深層心理のようなものを分析するわけですね。これは面白いところもある反面、とんでもないところもあって、極端な例を挙げると、あなたの夢にキノコが出てきた、それはあなたが無意識の間に、男性のキノコを欲しているからです、みたいな。無意識といわれる以上、否定はしきれないけど、何だかなぁ、という感じです。これを合コンとかで悪用すると、ほぼ確実に女性陣に引かれますので、やめといた方がいいですよ。「あなた、昨日どんな夢を見ましたか?ああ、それは無意識の間に、男性のキノコを欲している証です」

絵の解説

さて、この絵のどこがシュルレアリスムなのか、という解説に入ります。

まず、月が二つありますよね。月が二つあるなんて、現実にはありえないと思うかも知れませんが、ここが地球じゃなくて、どこか遠くの惑星だとどうでしょう?絶対にありえない、と言い切れますか。あるいは、千年後、二千年後、もしかしたら、月が二つになっている可能性も、0ではありません。つまり、私たちにとっての現実の世界の方が、実は狭い意味での現実であるかも知れないのです。

また、海面に映っている影、現実とは左右反対になっています。こんなのあり得ない、と思いますが、でも、夢の中だと、不思議ではありません。夢は現実じゃない、といっても、夢を見ること自体は現実の出来事ですから、これを否定することも、結局は狭い現実に閉じ籠ることになります。

もっというと、草上で、裸で横たわっている女性、これは非現実的な状況ではあるものの、絶対にないとはいいきれませんよね。とてもラッキーな人だったら、このような場面に出くわすかも知れません。可能性はゼロではありません。特に最近は、そっち系のYouTuberも増えていますからね。下着だけでは物足りず、全部脱ぎ出す日がやってくるのかも知れません。

ちょっと話がそれましたけど、要するに、現実とは何なのか、と問い直す、これが今回の作品です。

ちなみに、もう一つ、私がこういった非現実的な絵をかく理由がありまして、それは、現実を作っていく、ということに重点を置いているからです。現実にあるものを移すのであれば、写真で十分ですし、今はcgの技術も凄いです。そんな中での、絵の役割っていうのは、発想であったり、創造というところにあるのではないかなと、そう思うのです。

ちなみに、と何回も言いすぎると、鬱陶しくなるのは分かっているので、これが最後のちなみになんですけど、この女性のポーズは、代々西洋絵画の伝統となっているポーズで、ゴヤ・マネ・モディリアーニなど、そうそうたるメンバーが、このポーズの絵を描いています。だから、私も描きたかった、という、それだけの話です。


↑ブログで連載中↑
↑noteに掲載中↑

様式解説

1

西洋絵画史の始まり 西洋絵画史の精神は「人間性の自覚」にある、というのが私の基本的な考えの立場です。そのため、当ブログでは、初期ルネサンスを西洋絵画史の始まりとします。 舞台 フィレンツェ 初期ルネサ ...

2

舞台 ローマ 1492年、芸術文化を支えたロレンツォ・デ・メディチの没後、「フィレンツェ」は、ドメニコ会修道僧サヴォナローラの支配下に置かれ、やや停滞期を迎えます。その一方で、ユリウス二世に代表される ...

3

舞台 ヴェネツィア ローマで盛期ルネサンスが盛り上がりを見せていたその頃、東方とヨーロッパを結ぶ貿易で富を蓄積したヴェネツィアでは、別のルネサンスが誕生していました。一般に、ヴェネツィア派と呼ばれるも ...

4

舞台 アルプス以北 イタリアでルネサンスが盛り上がりを見せていたその頃、アルプス以北の国々でも独自の流れが形成されていました。イタリア・ルネサンスと区別して、北方ルネサンスと呼ばれます。 背景 市民階 ...

5

舞台 国際的な展開 イタリアに端を発したマニエリスムは、16世紀後半には国際的な広がりを見せます。 背景 反宗教改革に乗り出す カトリック教会が「反宗教改革」に乗り出す時代、「神秘的な表現」が求められ ...

6

舞台 フランス 太陽王ルイ14世が主権権を握る「絶対王政期」のフランスもまた、芸術の舞台となりました。自国の土壌で独自の様式を形成して行きます。 背景 フランスへ輸入 イタリア起源のバロックは、国境を ...

7

舞台 フランス 絵画史の中でも、特にロココは時代区分の難しい様式です。そもそもロココとバロックの区分を認めない説もあります。そのため当ブログでは、ロココの特徴が最も顕著に現れている、フランスで展開され ...

8

舞台 フランス 革命期からナポレオン時代にかけてのフランス。ナポレオンは絵画を、自らの理念の「プロパガンダ」として活用しました。そのため、絵画は記録的な意味合いを強めます。 背景 軽快なロココに対する ...

9

舞台 フランス 革命期から王政復古期にかけてのフランス。新古典主義が絵画の主導権を握っていた一方で、その「静的で厳粛な様式」は、人の心を真に動かす力に欠けていました。そんな中、絵画に再び「動き」を取り ...

10

舞台 フランス 第二帝政期、パリの都市改革を始め、社会構造の大きな転換があったフランス。都会人の新しい生活様式などが誕生しました。 背景 産業革命・資本主義の時代 19世紀後半、いよいよ「産業革命」の ...

11

舞台 フランス フランス美術は西洋絵画史の主要舞台の座を確立しました。イギリス風景画の伝統もスペイン画家ゴヤの系譜もフランスに吸収され、オランダ画家ゴッホもこの地での修行を得て覚醒しました。 背景 印 ...

12

舞台 フランス 印象派に続き、フランスが芸術の中心地として君臨しています。 背景 印象派の乗り越え 時代の寵児であった印象派も、1886年には最後の展覧会を迎え、いよいよ批判と反省の対象として乗り越え ...

13

一般に、スーラ・セザンヌ・ゴーギャン・ゴッホの四天王を総称して後期印象派と呼ぶことが多いです。しかし、当ブログでは個人的な趣きもあって、新印象主義(スーラ)・セザンヌ・後期印象派(その他の画家)という ...

14

印象派に並行して、象徴主義が発展 舞台 フランス 象徴主義は各国において多様な発展を遂げました。中でも大きな影響を与えたのは、フランスにおいて展開された象徴主義です。 背景 もう一つの芸術運動 19世 ...

15

著作権に対する配慮:当記事に掲載している模写作品の中には、著作権保護期間中のものが含まれています。そのため、「引用元(元絵)の明記」・「引用の必要性」・「画像は自前で用意すること」・「非営利目的」を徹 ...

16

著作権に対する配慮:当記事に掲載している模写作品の中には、著作権保護期間中のものが含まれています。そのため、「引用元(元絵)の明記」・「引用の必要性」・「画像は自前で用意すること」を徹底した上で、当記 ...

17

著作権に対する配慮:当記事に掲載している模写作品の中には、著作権保護期間中のものが含まれています。そのため、「引用元(元絵)の明記」・「引用の必要性」・「画像は自前で用意すること」を徹底した上で、当記 ...

-シュルレアリスム, 令和四年作品