作品No61

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そしてもう一つ、イデア論で重要な考え方があります。それを絵にしたのが、四枚目の作品なんですけど、「イデア(線分)」です。平たくいうと、認識能力には段階があるということ。先ほどの太陽の話では、私たちは太陽の光によって物を見ることができるというものでしたが、この太陽の光にもレベルがあって、「レベル1の光で見えるもの」「レベル2の光にならないと見えないもの」「レベル3の光にならないと見えないもの」「レベル4の光にならないと見えないもの」があるわけです。

あんまり説明ばっかしだと疲れてきますので、簡単な思考実験をしてみましょう。

私たちには、色鉛筆と鉛筆という概念がありますが、仮に色鉛筆と鉛筆という概念がなくて、書くものという概念しかなかったとします。

すると、これは何ですか?これは書くものです。

これは何ですか?これは書くものです。

じゃあ、この二つは同じものですか?はいそうです、となっちゃいます。同じ、書くものですから。でも私たちに、色鉛筆と鉛筆という概念があれば、

これは何ですか?これは色鉛筆です。

これは何ですか?これは鉛筆です。この二つは同じものですか?いいえ、違います、といえますよね。書くものという概念では認識できなかったものが、色鉛筆・鉛筆という概念では認識できる、これが認識の段階の違いです。そしてこの段階の違いがどこから生ずるかというと、差異です。他のものと違うということ、この差異が増せば増すほど、認識できる対象が増えていくわけです。

これはaさんの鉛筆です、

これはどこどこの文房具屋さんで買った鉛筆です、

これは昨日買ったばかりの鉛筆です、という風に。そして、差異の度合いが100%に到達したとき、私たちの認識も100%になります。言い換えると、私たちの認識が真理に達します。これがイデアなのです。

要するに、イデアというのは、差異の極限です。それゆえに、多様性であり、イデアというのは、究極の個人を見つける運動となります。

「色鉛筆」という概念だと、これ全部が色鉛筆ですが、

「赤色鉛筆」だと、よりその対象に近づきますよね。

二本あったとしても、こっちは去年買ったやつ、

こっちは今年買ったやつ、という風に区別できれば、どんどんその対象に近づきます。それはどんどん個別的になっていくわけです。

これを自分に置き換えると、もっと分かりやすくなるでしょう。「私は人間です」これだと全然個別的ではありませんが、

「私は田中です」だと、より私自身を指すようになりますよね。

「私は北海道の田中です」

「私は北海道の田中たなこ60さい男性です」っていう風に、差異が広がれば広がるほど、それは私自身となるのです。

永遠回帰

では、どのようにして、差異が広がっていくのでしょうか。それが「概念の創造」です。当然ですけど、概念が増えれば増えるほど、差異は広がります。差異が広がることによって、個が誕生します。個はさらに真の自己を追及するために、概念を創造します。概念が増えることによって、差異が広がります。この永遠回帰がイデアなのです。

この絵は、まさにその永遠回帰を描いているわけです。ただ、この解釈は、一般的なイデア論とはかけはなれちゃってますので、その点はご注意下さい。

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様式解説

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-イデア, 令和四年作品, 哲学