西洋絵画−マニエリスム

前の様式

舞台

国際的な展開

イタリアに端を発したマニエリスムは、16世紀後半には国際的な広がりを見せます。

背景

反宗教改革に乗り出す

カトリック教会が「反宗教改革」に乗り出す時代、「神秘的な表現」が求められるようになります。

絵画による奇跡体験

論理を持って「奇跡」を説明することは出来なくても、絵画の世界の中でならそれは可能になるからです。

劇的な表現の追求

それはやがて古典主義の特徴である、「穏やかさ」や「荘厳さ」、「静けさ」や「バランスの重視」に対して、より「魂の根源」に迫る表現に至りました。

ミケランジェロの影響

その手本となったのはミケランジェロの人体表現です。「体のねじれ」はまるで、「激しい感情の動きを反映」しているようです。

独自性の模索

またこの時期の画家たちは、前代の巨匠たちを自らの基盤にしながらも、そこに「自らの独創性」を付加しようと努力しました。

特徴と画家

神秘主義的な宗教画

マニエリスムの大きな特徴の一つである「絵画における奇跡体験」を、最も大きく成功させたのは、エル・グレコです。

エル・グレコ|1541−1614|ギリシャ

模写

彼の描く人物には「生活感がなく」、「軽量で細長い」、むしろ「魂の視覚化」ともいうべきものでした。また「ヴェネツィア派」を思わせる「大胆な筆触」とも結び付いて、神秘主義的な宗教画に仕上がっています。

知的な作品が流行

またこの時代には、「知的エリート向け」の作品が好まれるようになります。

それに応じて、「素養を下にした意味解釈を要する、難解な作品」も多数生まれました。その代表的な人物の一人が、ブロンズィーノです。彼の作品は一見何が描かれているのか分かりません。

ブロンズィーノ|1503−72|イタリア

愛の寓意・模写

彼の作品にもミケランジェロの影響は強く表れており、「身体をひねるポージング」や、「不自然なほど伸ばされた身体」がそれです。

各地の宮廷を通じて、各地へ広まる

イタリアに端を発したマニエリスムも、16世紀後半には「国際的」に広まって行きます。その伝達の役割を担ったのは、「各地の宮廷」でした。実際に各地の宮廷をはしごした画家には、アルチンボルドがいます。

ジュゼッペ・アルチンボルド|1527−93|イタリア

模写

古典作品とは明らかに一線を画する彼独自の様式は、「マニエリスムの一つの典例」といえましょう。

参考文献

美術史〈西洋〉|編・中山公男 中森義宗|近藤出版社

西洋美術史|監修・高階秀爾|美術出版社

西洋絵画史入門史|著・諸川春樹|美術出版社

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