第五話 釈尊の葛藤

釈尊は絶望していました。私の得た法、これはあまりにも難しく、世間からそう理解されるものではない。私が法を説いたとて、世間の人々に理解されないのであれば、それは単なる徒労に終わるだけであろう、、、

しかし釈尊には葛藤がありました。果たして、自分の得た法を自分一人で完結させても良いのだろうか?釈尊の心には、法を求める 世間の人々の姿が浮かんでいたのです。

そして遂に、釈尊は自ら法を説くことを決心します。これはかなり大胆な決心でもありました。

それというのも当時のインド正統派宗教では教えは秘義とされており、限られた弟子にのみ伝えるという伝統があったからです

釈尊はその伝統を否定し、一切の人々にその法を説くと決めたのです。

釈尊が何度も座を変えては七日間座り続けたというのも、実はこれだけの覚悟があったからこそでした。

一切の人々に向けて説く以上は自分の見つけた法は本当にそれだけの価値あるものか、釈尊は自ら厳しい試練に課すことでそれを確かめていたのです。

だからこそ釈尊は絶望にいたった訳ですが、しかし法を求める一切の人々の姿を彼自身の心の眼によって見出だされたことにより「説法」・・・法を説くことが始まるのです。

-釈尊の生涯