作品№8

今回の作品は、「家庭問題を隠蔽するお家」です。何をテーマにした作品かというと、公共性とプライバシー。プライバシーも大事だけど、それと同じくらい公共性も大事、そういったことを感じ取っていただければ本望です。

外の目線も大事

たとえば最近だと、外から家の中を覗かれたくないから、窓を小さくしたり、足元の方に窓を設置したり、あるいは覗き見防止シートをはったりしますよね。一昔前だと、それこそ高い塀を設けたりなんかもしました。こうやってプライバシーを高めていく、というのは、もちろんそれはそれでいいこともあるんですけど、一方で、デメリットもあります。それは、閉鎖的な空間が生まれてしまうといことです。

外から見えない、ということは、逆にいえば、中で何が起きているのかが、周囲の人からは分からない、ということ。仮にその場所で、虐待やdv なんかがあったとしても、それを外から気づくことは難しいわけですね。

もっというと、外からの視線がないからこそ、虐待やdv をする隙を与えてしまう、ともいえます。誰も自分を止めてくれない、そして自分自身でも止められない。この閉鎖的な空間が、虐待やdvを助長しているともいえるのです。

ましてや、虐待やdvの当事者たちが、自分から外の人に助けを求めるなんてことはなかなか出来ませんから、外部の力は必須です。

外からの視線、プライバシーを高める上では排除されがちですが、決して排除してはいけないものなのです。

たしかに、外からの視線は厄介ですし、面倒です。ほんの些細なことで、ご近所さんから注意を受けたり、愚痴をこぼされたり。そういったものは遮断してしまった方が、気持ち的にも楽でしょう。しかし、それによって生まれる孤立化の方が、はるかに大きな弊害へと繋がりかねません。プライバシーを求めつつも、社会参加を忘れない、この二刀流が大事になってくるでしょう。

絵の表現

最後に小ネタとして、この絵の色彩表現について説明しておきます。今回はセザンヌから学んだ手法を用いました。絵の前面部分には赤色を、奥行き部分には青色を用いることで、色による遠近法を成立させています。それというのも、暖かい色は近くにあるように見え、涼しい色は遠くにあるように見えるからです。

また、セザンヌの場合は、線による遠近法は用いませんが、私はより奥行きのある絵にするために、線遠近法も併用しています。

様式解説

1

-令和四年作品