作品№45

情念引力とは?

シャルル・フーリエの肖像画

まず、情念引力とは、19世紀の社会思想家シャルル・フーリエの考案した概念で、「四運動の理論」という本に出てきます。

当時は、ニュートンによって、「万有引力の法則」が発見された時代ですから、その影響を受けているのは、いうまでもありません。

要するに、自分の足だけで立っていると思っていたのが、実はそこには重力という働きがあったのだ。それと同じように、自分の感情にも、自分の意思だけではなくて、何か外側からの働きかけがあるのではないか?

そういったことを、この情念引力という言葉にかけたのだと思います。そしてこの情念引力を絵にして表したのが、今回の作品です。

本当に自分の意思?

今ここに、自殺しようとしている人がいます。

今の時代、自殺というと、「この人が自分の意志で死を選んだ」、なんていわれがちですが、その背景には、「いじめ」や「貧困」、「過酷な労働環境」や「孤独感」など、様々な要因があるはずです。

そうであれば、この自殺というのは、本当にこの人の意志だと言い切れるのか?

自己責任という言葉で片付けても良いのか?

ここには、他の力が働いていたのではないでしょうか。

色彩表現

作品の解説はここまでにして、最後に、この絵のこだわり部分を話したいと思います。

私がこの作品で最もこだわった部分は色彩です。

絵の右側は、死を連想させるような暗い色左側は逆に、希望を連想させるような、暖かい色を用いました。

それというのも、さきほどは、この人を自殺に追いやる力いじめ貧困などを情念引力の例として挙げましたが、逆にこの人の自殺を引き留める力、やっぱり生きて見よう、そう思わせる、情念引力には、そのような働きかけもあるはずです。

それはたとえば、ほんの些細な一言や、たった一人の理解者なのかも知れません。このように、人を死に追いやる力と、それを引き留める力引っ張り合っている状態、これが私の思う情念引力なのです。

そして、この人が生きる希望を見出だしたなら、この人は当然、絵の左側に行きますから、希望に満ちた明るい色になります。逆に、この人が右側に行くということは、自殺に追い込む力の方が勝ってしまったということですから、暗い色になるわけですね。

様式解説

1

-トップページ2, 令和四年作品