作品№4

1分で作品解説

今回の作品は、「メメント・モリ」です。日本語に翻訳すると、「死を忘れるな」という意味になります。

死が隠された現代

現代っぽい言い方をすると、「自分がもし明日死ぬなら、最後に何をするか?」とか、「明日死んでも後悔しないような生き方をしよう」みたいな感じですね。これって、言葉にするのは簡単ですけど、実感するには少々難しい。なぜなら、今の時代は、死と触れる機会が少ないからです。

死に対してお客様になってしまった

命を頂くにしても、お金さえ払えば、私の手元に届く頃には、生きたものではなくて、食材となっています。人が亡くなる時だって、今はプライバシーに敏感な時代ですから、よっぽど近しい人でない限りは、死の瞬間を見とるなんてこともありません。また、お葬式にしても、最近は家族だけで済ませる家族葬が増えていますから、お葬式に参列する機会自体も少なくなっているはずです。同じ町内に住んでいる人が亡くなったことを、半年後くらいに偶然知った、なんてことも珍しくありません。それに、葬式に参列することがあったとしても、私たちがご遺体を見る頃には、葬儀会社の方が化粧を施してくれて、綺麗な状態になっていますから、ますます死の実感は薄れていく一方です。遺体を運ぶのも、燃やすのも、現代の私たちは直接自分の手を使う必要はなく、全部葬儀会社や火葬場役員がやってくれますから、いつの間にか、「死」に対してお客様でいることが許されてしまっているのです。

火葬の瞬間で、死を思い出す

死に目を瞑ることが可能な現代だからこそ、私は死を忘れないように、死をいつでも思い出せるように、火葬の瞬間を絵にしました。死を視覚的に感じさせる、この絵はまさに、メメント・モリなのです。

アールヌーボー

ちなみに、今回の絵で用いた装飾的なデザインは、アールヌーボーです。特に深い意味があるわけではないんですけど、花を手向ける、というのにかけて、今回はアールヌーボーのデザインを用いました。植物モチーフが多いアールヌーヴォーと、今回の作品の雰囲気とが丁度マッチしたわけですね。せっかく、アールヌーヴォーを使わせて頂いたので、アールヌーボーの好きな所を一つ、紹介しておこうと思います。もちろん、デザイン自体も好きなんですけど、それ以上に、思想の部分が私は好きです。ざっくり説明すると、デザインを独占してしまうんじゃなくて、良いものはみんなで共有しあっていこう、というものです。

デザインを共有

特に、今の時代は著作権に厳しい時代。「これいいな」と思っても、そう簡単には使わせてくれません。もちろん、作者を守るための著作権は絶対に厳守される必要があるんですけど、ただそれによって、変な利権であったり独占状態が生まれたりして、何のための著作権か分からないような、著作権のための著作権みたいなこともあるわけです。もちろん、それが悪いっていってるわけじゃないので、ここは誤解しないで下さい。

大事なことは、アールヌーボーに分類される芸術家の方々、彼らが自ら著作権フリーみたいな感じで、みんな使って下さいって、共有を促した。このみんなで共有しようっていう精神が、僕は格好良いなと思います。もちろん、駆け出しの頃はお金が必要ですし、無名の頃に自分の作品がパクられると、そのまま相手に奪われかねませんから、著作権の重要性は私も身を持って実感しています。でも、いつかお金に余裕ができて、顔も広がってきたら、私も彼らみたいに、自分の作品を共有できるようになりたいなと思います。

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様式解説

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-令和四年作品, 死生観